研究概要 |
ミオスタチンは筋細胞から分泌され、筋芽細胞の分化・増殖をブロックすることによって筋線維の増加・肥大を抑制している。それゆえに,ミオスタチンの発現を人為的に抑制することができれば,筋肉の再生,肥大・増加をもたらし,寝たきり老人のリハビリテーションを助け,運動機能回復に貢献できると期待できる.本研究では,この分子標的治療を,実験動物筋肉内にミオスタチンsiRNAを導入する系により検証した.本年度は、以下の検討を行なった。まず始めにMyoblastの細胞株C2C12にambion社製のラベリングキットを用いてCy3標識したsiRNAと導入試薬RNAiFect(Qiagen)を種々の条件で、細胞に導入した。そして導入効率を蛍光顕微鏡で観察し最も良い導入条件を検証した。その結果、1×104個の細胞に対してsiRNAO.5μgに3μlのRNAiFectを反応させることにより、90%以上の細胞に導入することが可能であることが解った。次に導き出した導入条件で、Myostatinを標的としたsiRNA(si Myostatin)あるいは、コントロールのsiRNAを導入し、導入後のmRNAの発現をReal TimePCRで検証して、もっとも有効なRNAの配列を検証した。その結果より、5'-AUCGCACCCAAAAGAUAUAAGGCCA-3'の配列で約88%の抑制、5'-CCAAAAGAUAUAAGGCCAAUUACUG-3'では約83%の抑制効率を得た。これらの結果より、その後の実験では5'AUCGCACCCAAAAGAUAUAAGGCCA-3'の配列を用いることとした。次に、遺伝子抑制による細胞の生理的変化を検証するために、C2C12細胞にsiMyostatinを導入し、導入後の細胞増殖について検討した。siMyostatinを導入した細胞は、controlのsiRNAを導入した群あるいは未導入群と比べて、増殖速度が有意にUp Regulateしていた。このことよりsiMyostatinがmRNAの発現を抑制するのみならず蛋白レベルにおいても抑制効果があることが示唆された。またin vivo electroporation法をもちいてマウスの前頚骨筋にミオスタチンを標的とするsiRNAを導入した結果in vivoにおいても遺伝子発現を強力に抑制することが可能であった。このことより、siMyostatinを筋肉に導入することによって、筋肉量と筋力の増加が可能となることが示唆された。
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