研究課題
基盤研究(C)
滑膜肉腫に特異的な融合遺伝子SYT-SSXのfusion partnerとして単離されたSSXは、生理的には精巣に、また多種の臨床腫瘍例で発現が報告されており、Cancer testis antigenと考えられている。我々は、Nucleic Acid Sequence-Based Amplification(NASBA)定量系を用いてstageの進んだ骨・軟部腫瘍症例でSSXの高発現が認められることを既に報告した(11.研究発表の4)。次に、SSXの腫瘍の進展、増悪における役割を明らかにすることを目的として、細胞レベル、動物固体レベルでの解析を行った。ヒト骨・軟部腫瘍かちSSX遺伝子のcDNA全長をクローニングし、FLAGtagを付加した発現ベクターを作製した。ヒト骨肉腫細胞株Saos-2に導入、発現量の異なる安定過剰発現株を複数作製してその生物学的機能を解析した.SSX過剰発現細胞ではヽ浸潤゜運動能の亢進(親株の3〜5倍)を認めた。親株と比較して細胞増殖速度に差を認めなかったが、軟寒天中のcolony formationは亢進(親株の2倍)を認めた。さらに、これらの安定発現株をヌードマウスの皮下に移植すると腫瘤を形成し、病理組織像ではosteoidの形成が観察された(Mockでは腫瘤形成を認めなかった)。また、SSXを内因性に発現しているヒト線維芽肉腫細胞株HT1080にSSX特異的siRNAを導入してSSXの発現レベルを低下させると、浸潤・運動能の減少(controlの50%)、ミオシン軽鎖のリン酸化、Rac1の活性化が抑制され、形態的にはrufflingの減少が認められた。現在、SSXに対するsiRNAを内包したwrapped liposomeを担がんヌードマウスに投与し、抗腫瘍効果を解析することを計画している。
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