研究概要 |
本研究は,生体内の坐骨神経に直接局所麻酔薬を触れさせたとき,局所麻酔薬の太い線維AαとAαβ線維への効果に違いがあるかどうかを比較検討した。 ウレタン麻酔下のラットの坐骨神経に刺激電極を装着し,中枢側の結節部位の坐骨神経を露出して薬液投与のためのプールを装着した。第2腰椎から第5腰椎までの棘突起を切除して脊髄および神経根を露出し,第4腰神経につながる背側後根および腹側前根から中等度の太さの有髄線維を選び出し,銀線電極上に装着し,そこより脊髄側は切断した。末梢を電気刺激(5〜10V,0.2msec,5Hz)しながら,複合活動電位を記録した。坐骨神経上のプールに0.0625%,0.125%,0.25%レボブピバカインまたはロピバカインを0.1ml, pHを6.50±0.05に調整して20分間投与し,神経を溶液に浸漬した。その後,薬液を生理食塩液で洗い,複合活動電位の回復を確認した。 レボブピバカインとロピバカインは,濃度依存性に複合活動電位を抑制した。0.0625%レボブピバカインによる20分後のAαβの抑制は9±9(SD)%であったが,Aαの抑制は36±13%で,両群間に有意差があった。それ以外の濃度ではAαとAαβの抑制の程度は同じであった。ロピバカインの3種の濃度でも,AαとAαβの抑制の程度に差はなかった。 低濃度(0.0625%)レボブピバカインを末梢神経に作用させると,感覚Aαβ線維より運動Aα線維のほうが強くブロックされることが明らかになった。これは,固有受容感覚または触圧覚より運動のほうが強くブロックされることを示している。ただし,ロピバカインでは起こらないし,レボブピバカインでも高濃度になるとこのような乖離は起こらないことが明らかになった。
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