研究概要 |
研究1.無麻酔下雌ラットの膀胱内に,TNP-ATP(P2X3受容体拮抗薬)を注入すると用量依存性に排尿閾値圧,膀胱容量が増大し,ATP(P2X受容体刺激薬)を注入すると排尿閾値圧,膀胱容量を減少した.TNP-ATPの前投与は,前述のATPの効果は抑制した.以上の結果から,P2X3受容体は膀胱尿路上皮求心性神経伝達系において促進的に働くことが判明した. 研究2.ムスカリンM2およびM3受容体の膀胱機能における生理的意義を,ノックアウト(KO)マウスを用いて無麻酔下での膀胱内圧測定を行って検討した結果,排尿時の膀胱収縮にとって重要なムスカリン受容体はM3受容体であり,M2受容体の関与は少ないことが判明した. 研究3.前立腺肥大症(BPH)患者9名及び間質性膀胱炎(IC)患者5名を対象として,皮膚の知覚閾値測定装置であるニューロメーターを応用し,膀胱粘膜を異なる3種類の周波数で電気刺激し,その閾値を測定したところ,IC群において,BPH群に比べていずれの周波数刺激に対しても閾値が低下していた.さらに,IC群4名において0.5%塩酸ブピバカインを膀胱内に注入したところ,閾値が増加した.以上の結果から,IC患者では電気刺激に対する膀胱知覚閾値が低下して膀胱知覚過敏があることが示唆された. 研究4.難治性の排尿筋過活動(DO)患者5名及びIC患者6名を対象として,RTX膀胱内注入療法を施行した.DO5例中4例において,治療後1週以内に効果が発現し,その効果は3〜9か月間持続した.IC群では6名全例に治療後1週以内に症状が改善し,特に疼痛スコアと平均1回排尿量の有意な改善を認めたが,その効果の持続は2〜3か月間と短かった.特に重篤な有害事象を認めなかった. 研究5.膀胱癌患者4名の膀胱全摘出標本の健常部の粘膜にVR1受容体およびP2X3受容体が局在することが免疫組織化学的に確認した.
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