研究課題
基盤研究(C)
進行性腎障害の予後規定因子である腎間質の線維化においては間質の炎症が先行することから、炎症抑制がその発症進展を防ぐ意味で重要と考えられる。nuclear factor-κB (NF-κB)は炎症における重要な転写因子の一つであり、その持続的な活性化が腎間質線維化の進展につながることが明らかになってきた。一方、ROCKの阻害剤であるY27632やfasudilを用いた検討から、組織の炎症や線維化の成因にRhoキナーゼ(ROCK)が関与することが示唆されてきた。しかしながら、腎間質線維化におけるNF-κBとROCKの関わりをin vivoで検討した報告はない。そこでタクロリムス慢性腎障害モデルならびに腎線維化モデルである一側尿管結紮(UUO)ラットにROCK阻害剤であるfasudilを投与し、NF-κB活性ならびに炎症に対する影響を検討し、NF-κBとROCKが腎間質の炎症と線維化にどのように関わっているかを検討した。その結果、タクロリムス腎障害モデルではROCK抑制により間質の炎症やNF-κBに影響がなかったのに対し、UUOラットにおいてはNF-κB活性上昇の抑制とともにマクロファージの浸潤抑制が観察された。以上の結果から同じ炎症反応を伴う腎線維化でもROCK阻害薬の抑制効果が異なることが明らかとなった。さらにUUOラットにおける腎間質の炎症反応においてROCKはNF-κBの活性化に一部関与する可能性が示唆された。さらに抗炎症作用を有することが知られるcurcuminもUUOラットにおいてNF-κBの活性化、間質の炎症と線維化を部分的に抑制したがNF-κB特異的阻害薬のpyrrolidine dithiocarbamateの効果には及ばなかった。今後、異なった経路を介した抗炎症戦略を検索することが進行性腎障害の進展を抑制する点で重要である。
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