研究概要 |
T細胞は分化段階や機能の異なる様々なサブセットより構成されているが、特にエフェクターT細胞はサイトカインの分泌のパターンからTh1とTh2の2つに大きく分けられる。Th2細胞はIL-4,IL-5などを産生して液性免疫に作用し、またTh1細胞はIFN-・を分泌し主に細胞性免疫において重要な役割を果たしている。また、CD^8+T細胞もサイトカインの分泌のパターンからTh1,Th2細胞と同様にTc1,Tc2細胞が存在し、種々の疾患の病態において重要な役割を果たしていると推測されている。しかし、耳鼻咽喉科領域の炎症、アレルギー、自己免疫疾患におけるこれら細胞の役割についてはまだ十分な検討がなされていない。好酸球や好中球がアレルギー性炎症の重要なエフェクター細胞であることはあきらかであるものの、これらの細胞によるアレルギー炎症を抑制するためにはこれら細胞を効率的に制御するTh1細胞及びTh2細胞のインバランスを正常化させることが重要だと考えられる。まず疾患におけるTh1細胞及びTh2細胞のインバランスの度合いと、活動期と寛解期などの病期における変動を把握することが重要であり、かつ、Th1細胞とTh2細胞のインバランスを制御する可能性のあるTc1細胞とTc2細胞の作用について検討することは重要と考えられる。特に、難治性であるアレルギー性鼻炎におけるこれら細胞の役割を検討した結果、末梢血中のTh2及びTc1細胞がTh1およびTc2細胞に比較して有意に増加しており、このインバラスがこの疾患の病態において重要な役割をはたしていることが推測された。この傾向は、症状の重症度も正に相関し、症状増悪の1因と考えられる。
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