研究課題/領域番号 |
16591702
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
耳鼻咽喉科学
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
工 穣 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (70312501)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2006年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2005年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2004年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 内耳 / 難聴原因遺伝子 / COL9A3遺伝子 / CRYM遺伝子 / トリヨードサイロニン / Na,K-ATPaseβ1 / UbiquitinA-52 / カリウムイオンリサイクル / UbA52遺伝子 / 難聴 / 蝸牛血管条辺縁細胞 / 前庭暗細胞 / Na,K-ATPase / 甲状腺ホルモン / IX型コラーゲン蛋白 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
内耳に特異的あるいは高発現している遺伝子は難聴の原因遺伝子である可能性が高く、実際にいくつかの難聴原因遺伝子が同定されている。本研究では、既に内耳に高発現している遺伝子群であることがcDNAマイクロアレイによって確認されている、1)COL9A3遺伝子、2)細胞質甲状腺ホルモン結合タンパク(CRYM遺伝子、3)Ubiquitin A-52 residue ribosomal protein fusion product(UbA52)遺伝子について、その遺伝子がコードするタンパクの内耳における局在と、難聴のメカニズムについての検討を行った。 1)COL9A3遺伝子がコードするIX型コラーゲンタンパクは内耳コルチ器の蓋膜において、II型およびV型コラーゲンと共に重要な構成成分であることが知られており、重要な役割を担っていると予想される。IX型コラーゲンノックアウトマウスでは1ヶ月齢で難聴が認められ、月齢が進むにつれて難聴は進行し、徐々に高度感音難聴をきたすことが明らかになった。また、COL9A3遺伝子について非症候群性難聴患者を対象に変異スクリーニングを行ったところ、2つの病的変異が同定され、難聴の原因遺伝子である可能性が示唆された。 2)CRYM遺伝子はNADPH依存的性にトリヨードサイロニン(T3)と高い親和性で結合し、主に細胞質に存在するタンパク質で通常ホモ2量体を形成し核へのホルモン調節機能を担っている。これまで報告されている二つの変異に関してそれぞれのcDNAを利用しT3との親和性を検討し、またCRYM異常による難聴の機序を推測するために内耳でのCRYMの局在とNa,K-ATPaseとの共存について調べた。K314T変異を組み込んだCRYMタンパクではT3結合能が著明に低下しており、CRYM変異はCRYMとT3の結合能に影響を及ぼすことにより難聴になっていることが示唆された。また免疫組織化学では,蝸牛のらせん靭帯のII型繊維芽細胞においてNa, K-ATPaseβ1とCRYMが共存しており、CRYMによりT3が核内に運ばれ核内レセプターに結合しNa,K-ATPaseβ1が発現することで,カリウムイオンリサイクルにおいて重要な役割を果たすことが考えられた。またCRYMの異常により結果的にカリウムイオンリサイクルが阻害され難聴をきたすのではないかと考えられた。 3)Ubiuitin化が組織の恒常性の維持等に重要な役割を担っており、破綻によって発症する疾患のメカニズムが明らかになってきたが、内耳における基質タンパク質・特異的な酵素の報告はほとんどないのが現状である。内耳に高発現しているUbA52遣伝子に着目し、a)難聴患者におけるUbA52遺伝子の変異スクリーニング、b)タンパク質レベルでの局在の免疫組織学的検討、c)内耳におけるUbiquitin結合基質タンパク質の検討を行った。遺伝子の変異スクリーニングでは変異を認めなかった。免疫組織学的な検討では、蝸牛血管条辺縁細胞と前庭暗細胞においてUbA52の陽性所見が確認された。また、マウスの発達過程におけるUbA52の発現時期は、内リンパのカリウムイオン濃度の上昇の時期と一致していた。これらの結果から、内耳においてUbA52がイオン輸送に関連した機能的役割を担っている可能性が示唆された。内耳におけるUbiquitin結合基質タンパク質については、現在研究を継続中である。
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