研究概要 |
本研究の目的はヒトにおける声門部での流速変動を測定し声帯振動との関係を解析することである.ファイパースコープのチャンネル内に挿入可能な超小型熱線プロープを開発し,声門直上での流速変動を観測することに成功した.これはヒトでの初めての報告である.次に声帯振動を高速度カメラで観測するため光源の開発を行った.一般的にファイバースコープ下での高速度カメラ撮影は実用化されていない.高速で撮影をする場合には,露光時間も非常に短くなり,充分な照明が必要になるためである.我々は十分な光量を得る方法として2本のファイバースコープを使用した.さらに1.5mm径のライトケーブルを開発しファイバースコープのチャンネルから挿入した.合計3台の300Wキセノンランプを光源として使用した.喉頭ファイバーに接続した状態で,解像度512*ピクセル,毎秒2000コマで撮影可能となり,同質的にも満足できる高速度撮影に成功した.我々の開発した超小型熱線プロープを声帯直上に留置することによって呼気流速変動を測定し,その信号を高速度カメラシステムのプロセッサーメモリに同期させることによって,詳細な声帯振動の観察と比較検討した.従来声帯振動と声門流の考え方では声門断面積が一瞬0になると声門流も一瞬にして0になると信じられてきた.今回ヒトで初めて声門部の流速を実測した結果,声門断面積が0の時も声門の流速は0ではなく,むしろ声門面積が狭いときの方が流速は大きかった.従来にない発声のメカニズムに関する知見が得られた.
|