研究概要 |
免疫担当細胞の生体内遊走には、種々のケモカイン、ケモカイン受容体が関与する。今回我々は、数万個の遺伝子発現が一度に解析可能なマイクロアレイを用いて、ベーチェット病(BD)眼炎症に特異的なケモカイン遺伝子をヒトぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(BAU)と比較し、同定することを目的とした。ぶどう膜炎発作期BD患者8名、ぶどう膜炎寛解期BD患者8名、および健常者7名について解析を行った結果、発作期BD患者の平均遺伝子発現が健常人群の1.5倍以上であったものには、CCL3,CCL20,CXCL4,CCL11,CXCL10,CXCL7,CXCL6,CCR2,CL1,CCL27であり、このすべての遺伝子は寛解期BD患者においても健常者の1.5倍以上であった。マウス実験では、IRBPペプチドを免疫しEAUを発症させたマウス群と、無処置マウス群、臓器炎を発症しない牛血清アルブミンを免疫したマウス群(免疫のみ群)、ミエリン糖タンパクペプチドを免疫することにより脳脊髄炎を発症させたマウス群(EAE群)におけるケモカイン遺伝子発現を比較した。上記のベーチェット病ぶどう膜炎発作期で特に発現増強していたケモカインの中で、マウスにおいて解析可能であったものはCXCL7とCXCL10のみであった。CXCL10に関してはEAU群における特異的発現増強はみられなかったが、CXCL7の末梢血T細胞における発現は、ぶどう膜炎の発症がみられる免疫後2週目でEAU群において最も強く、網膜においても同様の結果が得られた。そこで、ぶどう膜炎発作期BD患者15名、ぶどう膜炎寛解期BD患者6名、および健常人5名におけるCXCL7mRNA発現をreal time PCRにより解析したところ、マイクロアレイでの結果に矛盾なく、CXCL7の発現は発作期BD患者で最も高く、寛解期BD患者、健常人の順であった。
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