研究概要 |
集中治療室における患者の鎮静は時に長期に及び、その場合損傷した神経系が長期にプロポフォールにさらされることになる。一方この研究で使用する水棲カタツムリ(リムネア)は、特定の機能を持った脳細胞を比較的簡単に同定することができ、神経間でシナプスを再構築できる。そこで再構築したこのモデルを用いプロポフォールの神経に対する作用を調べた。 (方法)リムネアをリムネア生理食塩液入りの解剖皿に固定し、脳を取り出す。その後、シナプス前細胞のVD4とシナプス後細胞のLPeD1をそれぞれ抽出する。このVD4とLPeD1のペアはin vivoで興奮性のシナプスを形成している。抽出したそれぞれの細胞をディッシュに置き培養する。細胞培養12-18時間後に形成された細胞体細胞体ペアのそれぞれの細胞に、ガラス電極を刺入し、VD4に単活動電位を与え、LPeD1から得られたEPSP(興奮性シナプス後電位)の振幅を測定する。 1.生理食塩液を灌流した状態でEPSPの振幅を測定する。次に標本に25μMのプロポフォール入りの生理食塩液を灌流し、EPSPの振幅を測定する。同様に50μM,100μMについても行う。以上の方法で行った実験でコントロール群に比べ25μM,50μM,100μMのプロポフォール群で濃度依存性(84.1%,67.9%,24.4%)にEPSPの振幅を抑制するということがわかった。 2.生理食塩液を灌流した状態でEPSPの振幅を測定する。その後VD4にテタヌス刺激を与え、その後にVD4に与えた単活動電位から得られたEPSPの振幅を測定し、最初に得られたEPSPと比較する。このようにして短期シナプス後増強の割合を測定する。同様に25μM,50μM,100μMのプロポフォール入りの生理食塩液を灌流した状態で測定する。これらのデータを比較し、プロポフォールがシナプス可塑性に影響するかどうかを調べる。以上の研究は現在シナプス後増強の割合を測定している段階である。
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