研究概要 |
1)マウスセメント芽細胞株(OCCM-30),骨芽細胞株(ST2),頭蓋骨骨芽細胞(OB),Yクロファージ(RAW),歯周靱帯細胞はTLR2,3,4,9-mRNAを恒常的に発現していた.2)TLR4経路ではTNF-a,IL-6,RANKL発現の促進,OPG発現の抑制が生じ破骨細胞性骨吸収が誘導され,2相目のRANKL誘導にはCOX-2を介したPGE2産生が関与していた.TLR5刺激の反応性はTLR4刺激と類似していた.TLR4,5刺激は共通の経路を介しNF-kBを活性化し,サイトカインの発現を誘導するとの報告がある,3)TLR9経路ではTNF-a,RANKL発現促進に加え後からIFN上昇が観察されたことからTLR9を介する破骨細胞誘導メカニズムはTRL4とは異なる可能性がある.4)LPS刺激により各細胞においてTRL4受容体発現抑制が観察された.LPS投与後の歯周組織でTLR4受容体の免疫組織化学的染色性が減弱するという検討結果を支持するものとなった.歯周組織は繰り返し加わるLPS刺激に対し,過剰な免疫反応が生じないような状態(免疫寛容)にある可能性がある.一方,CpG-ODNによるTLR9刺激で,各TLR受容体発現におおきな違いは見られなかった.以上,TLRは歯周病原菌刺激後の自然免疫反応誘導や歯周炎成立に複雑に関与する可能性がある.5)LPS単独ではヒトと同じようなB細胞病変が生じない.そこで,Aa死菌(10mg/1匹)を1周間毎,2回腹腔内注射することによって免疫後,50g/ml OMP-29と1mg/mlLPSの混合液を歯肉溝から滴下投与した.血清中のOMP-29に対する抗体価は上昇したが,歯周組織の慢性炎症巣を誘導できなかった.さらに,LPS1回投与による一過性の滲出反応もマウスでは軽微であった.現在,LPS注射投与による組織変化の比較検討を計画している.
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