研究概要 |
最近の遺伝性・腫瘍性骨軟化症/くる病の研究の進展により,硬組織局所におけるリン酸代謝調節機構が病態発現のみならず生理的にも重要であると予想されている。本件では,リン酸代謝の主要組織として,腎/腸におけるNaPi輸送機構と同様に骨芽細胞のNaPi輸送が基質石灰化に必須であると想定し,タイプIIINaPiトランスポーター(Pit1)のおよびリン酸代謝調節因子の発現調節により,それらの機能解析と骨軟化症(くる病)の改善効果を検証した。 今回の研究では、主として (1)骨軟化症((2),(3)参照)/くる病モデル((4),(5)参照)を作製した。 (2)NaPi輸送阻害剤foscarnetを低用量で新生仔ラット頭蓋皮下投与すること,骨芽細胞に成熟分化した培養モデルに投与することで、システミックな影響や骨芽細胞分化への影響に無関係に石灰化不全を誘導した。Foscarnetに早期に反応する遺伝子をスクリーニングしたところ,リン酸代謝調節作用をもつ分泌性のリン酸化タンパク,スタニオカルシン(STC)1を得た。 (3)Pit1-STC1のノックダウン、過剰発現の組合せにより、Pit1はリン酸石灰化の優位に働くことが示された。 (4)組換えヒトSTC1を軟骨細胞培養に添加すると,Pit1発現の増加,FGF23の発現レベルの低下を認め,NaPi活性を正に調節し,アポトーシスを誘導した。 (5)foscarnetによりNaPi活性を阻害すると,上記のSTC1依存性の軟骨細胞の変動が抑制された。 以上の結果より,硬組織におけるリン酸輸送の主要分子としてPit1を同定し,その調節に直接または間接的にFGF23,スタニオカルシンが関与することを明らかとなった。これらの因子の発現調節により,くる病/骨軟化症の改善が期待された。
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