研究概要 |
目的:歯周炎は、グラム陰性桿菌群とTreponemaによる感染症である。Porphyromonas gingivalisは、成人性歯周炎の主要な原因菌で、付着性線毛、内毒素、タンパク分解酵素などの病原因子を有する。慢性歯周炎局所から共に高頻度で検出される、本菌と、Tannerella forsythensis, Treponema denticolaの3菌種の組み合わせは、red complexと呼ばれ慢性歯周炎の発症に重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では、P.gingivalisなにfocusをあて、共凝集およびバイオフィルム形成促進作用について解析を行い、歯周病原性バイオフィルム形成機構の解明を試みた。 方法:P.gingivalis333277株とT.denticolaATCC35405株の共凝集は、coaggregation buffer中で行い、凝集を吸光度の変化によって測定した。P.gingivalisの表層タンパク(arg-gingipain A, B, lys-gingipain, FimA, Mfa-1)が共凝集に与える影響を明らかにするために、それぞれの遺伝子欠損株を用いた。バイオフィルム形成能については、2菌種を0.4μmのフィルターで仕切って培養するtwo compartment systemによる共培養によって解析を行った。 結果及び考察:P.gingivalis33277株とT.denticolaATCC35405株の共凝集は、Mfal欠損株、kgp, RgpA, RgpBおよびKgp, RgpA, HagAの欠損株で低下していた。特にKgp, RgpA, RgpBおよびKgp, RgpA, HagAの欠損株では共凝集がほとんど認められなかった。これらの結果から、P.gingivalisの共凝集には、MfalとRgp, Kgp, HagAが共凝集に関与していることを示している。さらにFimAとMfalのmutantがT.denticolaと共凝集することから、Rgp, Kgp, HagAが共凝集に中心的な役割を果たしていることが考えられた。P.gingivalisとFusobacterium nucleatunをtwo component systemを用いて共培養すると、F.nucleatumの場イオフィルム形成が4倍近くまでに増加した。P.gingivalisと他菌種の共凝集は、本菌のバイオフィルム内への定着のみならず歯周病原性バイオフィルムの形成促進に重要な役割を果たしていると考えられる。
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