研究分担者 |
森本 泰宏 九州歯科大学, 歯学部, 助教授 (00275447)
上山 吉哉 山口大学, 医学部, 教授 (00168668)
羽地 達次 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50156379)
森本 景之 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部, 助手 (30335806)
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研究概要 |
我々は,薬剤耐性と感受性を示す二種類の口腔扁平上皮癌細胞を用いて,アポトーシスとMDR1遺伝子の発現およびその転写調節について調べた。ペプロマイシンでSCCTFとSCCKN細胞を処理すると,SCCKN細胞はSCCTF細胞に比べて,より低濃度のPEP処理によりアポトーシスが誘導された。MDR1蛋白阻害剤でSCCTF細胞を前処理することにより,ビンクリスチンによるアポトーシス誘導が増強した。SCCKN細胞はEgr-1を常に発現することにより,癌細胞としての性質を維持し,その動向は蛋白質脱リン酸化により制御された。よって,口腔扁平上皮癌細胞の抗癌剤に対する感受性の違いの一部はアポトーシス誘導能の差であること,SCCTF細胞におけるmdr1発現には転写調節因子NF-YとそのDNA結合領域が重要であることがわかった。我々はまた,腫瘍の進行の分子機構を解明するために,進行能のある細胞とない細胞を樹立し,両細胞間の細胞内蛋白質の発現を,ディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて解析した。その結果両細胞間で十数種類の蛋白の発現に変化が認められ,その分析を行なった。我々はさらに核小体に存在するニュークレオリンに注目して,アポトーシスによっておこるニュークレオリンの変化を調べた。アポトーシス細胞では分子量110kDaのニュークレオリン蛋白の発現が減少し,分子量80kDaの蛋白が新たに出現し,その量は増加した。PP1δとニュークレオリンは核小体に存在し,互いに結合していた。また,PP1δをRNAiすると他のPP1の発現は抑制を受けなかったが,PP1δの発現は著しく抑制された。よって,PP1δはリン酸化ニュークレオリンを脱リン酸化する酵素であると考えられる。
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