研究概要 |
1.口腔ジスキネジアは,下顎・口唇がしきりに動く顎顔面領域に起こる異常な不随意運動である。実験動物を用いた研究から口腔ジスキネジア様のラットの常同的な顎運動の発現には,線条体と側坐核のドパミン(DA)神経活動の亢進が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかしながら,これら中枢DA神経機能亢進の発現機構の詳細は明らかでない。そこで,本研究では,(1)覚醒アミンのdexamphetamineの線条体内への微量注入,(2)δ受容体アゴニスト候補物質のTAN-67の側坐核への灌流投与,(3)内因性μ受容体アゴニスト候補物質のendomorphin (EM)-2,EM-1の側坐核への灌流投与が,それぞれ誘発した細胞外DA遊離に注目し,これらの発現機構の特徴についてラットを用いてin vivo脳微小透析法により検討を行った。また,(4)DAの細胞内由来を検索するため,DA合成律速酵素阻害薬alpha-methyl-p-tyrosine (AMPT)の脳内灌流投与が線条体または側坐核の基礎DA遊離に及ぼす効果についても検討を加えた。 2.その結果,以下のことが示された。(1)dexamphetamineの線条体内局所投与が誘発した線条体のDA遊離は,シナプス小胞ξ細胞質の両方の細胞内DAプールを由来としている。(2)(-)-TAN-67の側坐核への投与は,フリーラジカルの産生を促し,その結果生成されたグルタミン酸によるNMDA受容体の活性化が同部位のDAの遊離を起こす可能性がある。(3)EM-2の側坐核への灌流投与は,オピオイド受容体を介さずに,また,EM-1の側坐核への灌流投与はμ1受容体を介して同部位のDA遊離を惹起する。(4)AMPTの局所灌流投与は,脳内のある特定の領域におけるAMPT感受性のDAプールの役割を分析する上で有用だが,その効果を脳内の領域問で比較するのには適さない。
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