研究概要 |
Rad9はG2/M期チェックポイント蛋白で細胞周期アレストとDNA修復に関与している。本研究では悪性腫瘍細胞における細胞周期とRad9の関係を明らかにすることを試みた。 1.新生児包皮由来正常ヒト表皮角化細胞(NHEK(F)),ヒト舌由来扁平上皮癌細胞株(SCC-25)におけるUV照射後のRad9 mRNA発現を検討した。NHEK(F),SCC-25にUVB照射(0〜3000mJ/cm^2)6時間後Rad9 mRNA発現の増大を認めた。SCC-25におけるUVC刺激(0〜5500mJ/cm^2)2時間後の細胞内Rad9 mRNA発現量は照射量に伴って増大した。 2.NHEK(F),正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1),ヒト舌由来扁平上皮癌細胞株(SCC-9,SCC-25),ヒト皮膚悪性黒色腫細胞株(G-361),ヒト歯肉由来不死化ケラチノサイト(NDUSD-1)を使用しRad9および細胞周期制御蛋白(p53,p21,p16,p38,ATR,Chk1,Cdc25B,CyclinB1,CyclinD1,PCNA)タンパク発現を検討した。細胞に低線量(0〜200J/m^2)のUVBやX線照射(2Gy),ヒドロキシウレア(1mMまたは10mM)処理といった刺激を与え,Rad9の発現の変化を検討した。その結果,刺激に対するRad9の発現は細胞や刺激の種類により異なり,ヒト舌由来の扁平上皮癌細胞株であるSCG-9とSCC-25においても発現は異なっていた。Rad9とその他の細胞周期制御因子の発現の関係は明らかではなかった。 3.副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)が口腔癌の角化や分化,組織学的悪性度に関連することが示され,また細胞の増殖との関連が報告されていることから,細胞周期制御への関与が予想されたが,UVB, X線,ヒドロキシウレア処理後のPTHrPの発現は細胞や刺激の種類により異なっており,他の蛋白との関連は明らかではなかった。 本研究では高線量UV照射後のRad9 mRNA発現増加を認めたものの,細胞周期とRad9の関係は明らかではなかった。また本研究ではRad9と悪性腫瘍の性状との関係は検討されていない。Rad9の発現の違いが腫瘍の悪性度や予後に影響を与える可能性があり,今後の検討課題と考える。
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