研究概要 |
本研究の目的は,レーザーを用いたより快適でより生物学的なう蝕治療法の確立のための基礎データを得ることであり,レーザーの象牙質・歯髄複合体への生物学的影響を明らかにすることである。 1 う蝕病態の細胞生物学的評価 ヒトう蝕歯における免疫担当細胞,神経線維、さらに歯髄幹細胞について免疫組織化学的に観察し、さらに従来の歯髄修復及び修復材との関連について検討した。その結果、高度に進んだう蝕病巣下においても、血管周囲に歯髄幹細胞が多く認められることが確認された。 2 レーザーの象牙質・歯髄複合体への生物学的影響の検討 ラット臼歯への半導体レーザー照射に対する象牙質・歯髄複合体の反応を免疫組織化学的に検索した。その結果、(1)全ての照射条件(0.5W,1.0W,1.5W,60秒間x3回)において、照射7〜30日後に歯髄内に硬組織形成が観察された。(2)形成された硬組織は第三象牙質と骨様組織に分類され、照射出力の増加に伴い骨様組織の割合が増加した。(3)形成された修復象牙質は、象牙芽細胞の分化のマーカーとなるheat-shock protein(HSP)-25陽性細胞で裏打ちされていた。歯への半導体レーザー照射は、歯質に傷害を与えることなく、歯髄腔内に第三象牙質の形成を誘導することが明らかとなった。 3 ヒト歯髄組織に対する半導体レーザーの影響について ヒトの歯の窩洞形成後に半導体レーザーを照射した後レジン充填を施し、免疫組織化学的に検索した。象牙質の厚さ3分の2を越える深い窩洞にレジン充填を施すと、一ヶ月後ではHLA-DR陽性細胞が象牙質に沿って並び、基質形成細胞は観察されない。ところが同じ条件の窩洞でも、半導体レーザーを照射したものでは、HLA-DR陽性細胞は希薄であることが確認された。
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