研究分担者 |
矢谷 博文 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (80174530)
中村 隆志 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (20198211)
石垣 尚一 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40212865)
荘村 泰治 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (10154692)
絹田 宗一郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60397651)
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研究概要 |
我々は,動画像処理解析ソフトウェアにより顔面表面の運動を解析し,ニューラルネットワーク(NN)プログラムを応用することで,標点・治具等を下顎切歯部に付与することなく顎運動を測定するシステムを開発することを計画している. まず,我々が以前に開発した家庭用DVカメラを用いた簡易型顎運動測定システムが,市販の顎運動測定システムと同等の測定ができることを確認した.そこで,我々のシステムと市販のシステムで同時に被験者の咀嚼運動を測定したところ,両システムによる測定経路は非常に類似していた.さらに,回帰分析の結果,x, y, zいずれの座標値においても0.9以上の高い決定係数(R2)を示す強い相関が確認された. 次に,限界運動時の下顎切歯部と口腔周囲組織の運動を同時に測定し,NNによる予測の可能性について検証した.被験運動は側方限界運動とし,下顎切歯部の運動と口腔周囲標点の運動の関係を,パーソナルコンピュータ上で動作するNNソフトウェアに学習させた.学習したNNを用いて,口腔周囲の標点の運動から下顎切歯部の運動を推測し,推測された座標値と実測値を比較した.その結果,すべての被験者においてNNによる推測値は実測値とほぼ一致した.すなわち,口腔周囲組織の運動軌跡から限界運動時の下顎切歯部の運動軌跡をニューラルネットワークによって,推測できることが示された. さらに,ガム咀嚼時についても同様の検証を行ったところ,実測値と推測値の相関係数はx座標値(左右方向)で0.5程度,y座標値(上下方向)で0.9程度であった.つまり,x座標値に関しては改善の余地が見られるものの口腔周囲組織の運動軌跡から咀嚼運動時の下顎切歯部の運動軌跡をニューラルネットワークによって,推測できることが示された. 上記知見は,下顎切歯部に治具を装着する必要のない顎運動測定システムを構築するうえで有用であると考えられる.
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