研究分担者 |
矢谷 博文 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (80174530)
中村 隆志 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (20198211)
荘村 泰治 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (10154692)
絹田 宗一郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60397651)
高橋 純造 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (80029149)
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研究概要 |
歯科補綴装置製作の最終行程である研磨の作業効率向上を目ざし,表面改質装置として工業界で注目されている大面積電子ビーム照射装置(electron-beam:EB)の臨床応用について研究を行った. 電子ビーム装置のアルゴン圧を変化させることでEBの強度を2パターンに変えて照射した. まず,純チタンおよびチタン合金の鋳造体にEB照射を行った結果,表面あらさ,光沢度,耐食性において改善がみられた.耐食性の向上に関しては従来の技工士による研磨では得られなかったものである.また,EB照射後の試料表面をSEMにより観察した結果,表面の凹凸が減少しており,EBは試料表面の滑沢化に有用であることがわかった.表面あらさ,光沢度に関してEB強度は強い方が向上していることがわかった. X線回折による結晶構造解析も行ったが,純チタンおよびチタン合金ではEB照射前後でピークプロファイルに著明な変化は認められなかった. 次に,最も多く用いられる歯科用合金である金銀パラジウム合金についても検討を行った.金銀パラジウム合金のEB照射前後の光沢度に改善がみられた.金銀パラジウム合金の場合は、ブラスト材として従来使用していたアルミナではEB照射後クレーター状のくぼみが生じ,表面あれが認められた.そこで,ブラスト材をガラスビーズに変更しEB照射を行うと,表面あれも解消し,安定した光沢度が得られた.また,EB照射後のX線回折プロファイルに変化が認められた.そのプロファイルにはアモルファス相と考えられるブロードなピークが確認された. X線回折による結晶構造解析の結果,金銀パラジウム合金におけるα相(銀リッチな相)とβ相(銅リッチな相)に変化が認められ,EB照射により表層が融解し銅が増えたα相とアモルファス相が生じたと考えられる. 本知見は,チタンや金銀パラジウム合金といった歯科用金属の研磨における作業効率の向上に有用であると考えられる.
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