研究概要 |
本年度は,リン酸化された細胞接着因子がチタン表面に結合するメカニズムの一端を明らかにすることを目的として,リン酸化アミノ酸およびリン酸化ペプチドのチタン表面への結合・解離特性について,X線光電子分光法(XPS)および表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いて表面科学的検討を行い,以下の結果を得た. (1)リン酸基はチタン表面へ結合親和性を有するとともに,チタン表面に約0.5Aのオーダーでいわゆるエッチング様効果をもたらすことが明らかとなった. (2)o-phospho-L-serineおよびo-phospho-L-threonineは,リン酸基を有することでチタン表面に化学結合し,また,骨芽細胞の初期接着性を向上させた. (3)RGDS(PO_3H_2)PAペプチドのチタン表面への結合量は,pH3.0の場合と比較して,pH1.9において3.6倍と有意に増加した(p<0.05). (4)RGDXXXXXS(PO_3H_2)PA(X=MiniPEG)ペプチドは,RGDS(PO_3H_2)PAペプチドと同様に,チタン表面に化学結合していた. (5)チタン表面へのリン酸化アミノ酸およびリン酸化ペプチドの結合メカニズムについて,(1)チタン表面はゼロ電荷点(pH6.7)より低いpHで正に帯電すること,(2)リン酸基は負に帯電し,正に帯電したチタン表面に結合すること,(3)リン酸基は,pH2.0以下でチタン表面へのいわゆるエッチング様効果をもたらし,強固な化学結合を生じることが明らかとなった. 以上の結果より,リン酸化アミノ酸およびリン酸化ペプチドのチタン表面改質では,いわゆるエッチング様効果の生じるpHレベルでリン酸基が表面により確実に化学結合するメカニズムが明らかになった.このことは,種々の細胞接着因子をリン酸化することにより,チタン表面に細胞接着因子を選択的に結合させる表面改質が可能となり,接着細胞の配列を制御できることを示唆していると考える.
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