研究概要 |
はじめに,咬合高径が予想できない条件下で変化したときの咬合力調節について解析した。 健常成人8名を被験者として,連続開閉口運動中に咬合高径が変わる装置を用いた実験を行った。各被験者には一定の咬合力を保つよう指示した。咬合高径の増加後の第1ストロークの咬合力は第2および第3ストロークの咬合力よりも増大していたが,咬合高径低下後には第1ストロークの咬合力は第2ストロークよりも小さな値を示した。これらの結果は,咬合高径の変化に伴う咬合力の調節が変化後の2,3ストロークでほぼ完了していたことを示したものと考えた(田中ら,2006)。 次に,咀嚼時に食物の硬さが予想できない条件下で変化したときの咬合力調節について解析した。 健常成人7名を被験者として,咬合物質硬度可変装置を用いて咬合力を一定に保った連続開閉口運動を行わせた。咬合力のピーク値および力積値は硬度変化後のウレタンゴム硬度の有意な影響を受け,硬度の高いゴムを咬合しているときには高い値を示した。さらに,咬合力のピーク値と力積値は,同じ硬度のゴムを咬合する間は一定に保たれていた。これらの結果は,一定の咬合力を保つという課題に,被験者は咬合物質の硬さに応じて咬合力を変化させて対応していたことを示しており,効率よく咀嚼を行うために合目的的な調節がなされていたことを示唆したものと考えた(島田ら,掲載予定)。
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