研究概要 |
象牙質に対するレジンの接着強さはセルフエッチングプライマーの保管期間が延長したとき,プライマーの中に使用されている機能性モノマーの変化によって低下することが知られている. そこで,本研究では,象牙質に対するレジンの接着性の低下を解明するために,5つの保管期間(40℃で0,30,60,90,120日)を設定し,それぞれの期間において,セルフエッチングプライマーに使用されている機能性モノマーの変化を調査し,セルフエッチングプライマーの変化と接着性の効果について検討した。 購入直後のEDプライマーII象牙質接着システムに使用されている溶液AにはHEMAが含まれているが,約5%が加水分解されていた.この溶液Aを用いて象牙質を処理した場合の接着強さは約12MPaであった.溶液Aは保管期間が長くなることによって,溶液A中のHEMAの加水分解が起こったが,加水分解の程度が62%となるまで,購入直後に示された接着強さは変化しなかった. さらに,溶液Aの保管期間が延長すると,溶液Aに含まれているHEMAの加水分解が62%以上となったが,その場合では,接着強さは8MPaまで,大きく低下を示した.この大きな接着強さの低下は,脱灰された象牙質面に露出した象牙質コラーゲンの網目構造に対するプライミング効果の低下によるものと考えられる. 溶液Aの劣化はHEMAにおけるメタクリロキシエステルの加水分解にとって引き起こされ,接着強さの低下を誘発したものである.とりわけ,溶液Å中のHEMAが67%加水分解した場合では,象牙質に対する接着強さの大きな低下が観察された。我々が観察した初期の接着強さはHEMAの加水分解が62%に達するまでは維持されることが示された.
|