研究概要 |
本研究の目的は、VEGFファミリーが口腔扁平上皮癌のリンパ節転移並びに臨床病理学的因子とどのように関わっているかを評価し、また、その最適な検査法を検索することである。 当院で根治的治療後、2年以上の経過観察が行われた新鮮口腔扁平上皮癌129例を対象とした。コントロールは健常者ボランティア47例を用いた。VEGF-A、VEGF-C、VEGF-D,sVEGF-R1,sVEGF-R2の5種類をELISA法によるkitにてそれぞれ解析した。各VEGFファミリーの血清値と臨床病理学的因子、治療感受性、予後との関連を比較検討した。結果はVEGF-A、-C、-Dの3種類において、口腔癌患者は健常者よりも有意に高値を示したが、sVEGF-R1,sVEGF-R2では両者に差を認めなかった。コントロールの95%分布区間からカットオフ値を設定した際のVEGF-A,-C、-Dの陽性率はそれぞれ41、31、57%であった。VEGF-AはTとStageの進行にともない、有意に高値を示したが、予後との関連は認めなかった。VEGF-Cはリンパ節転移との関連は認めなかったが遠隔転移との関連が認められ、VEGF-Cの高値群は低値群よりも5年累積生存率が有意に低下した。VEGF-Dはリンパ節転移がなく、腫瘍の浸潤様式が軽度の群において有意に高値を示した。化学放射線治療の治療効果との関連は3種類ともに認めなかった。さらに、歯肉癌24症例を対象にVEGF-C,Flt-4、CD34、CD31、D2-40の免疫染色を行った。VEGF-CとFlt-4の発現と、血清診断の間に関連は認めなかった。また、これらの発現と臨床病理学的因子の関連では、Flt-4が性別と相関が認められた以外、関連する因子はなかった。VEGF-Cは、口腔癌の血清マーカーとして有用と考えられたが、免疫染色との関連の評価では多数症例での検索が必要である。
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