研究概要 |
本実験はリン酸カルシウム系生体材料をヒトロ腔領域へ応用した際に歯の移動や排列に適する必要充分量の骨再生が可能であるかイヌ実験モデルを用いて確認することを目的とした. ビーグル犬の頭蓋骨臨界欠損部,上顎骨の第3切歯抜歯窩を拡大した骨欠損部および人工的顎裂部に対しリン酸オクタカルシウム・コラーゲン(OCP/Collagen)複合体を応用して3系統の実験を行った.その結果,イヌ頭蓋骨の直径20mm大の自己修復不可能な骨欠損部においてOCP/Collagen複合体埋入により6か月以内に骨再生が確認された.摘出した頭部標本ではOCP/Collagen複合体埋入部位は触診にて周囲健常骨と同等な硬さで,硬組織の存在が窺われた.また,軟X線写真所見では周囲健常骨同様のX線不透過像が見られた.また,抜歯窩に応用した場合は3か月以内で抜歯のみ行った対照側に比して顎堤の形態は良好であった.人工的顎裂部への応用ではOCP/Collagen複合体の埋入により4か月でX線写真上,良好な骨架橋が形成された.形成された硬組織を粉末にしてX線回折を行ったところ,頭部および顎骨ともに周囲健常骨と同様なパターンを示す骨組織であることが判明した.以上の結果からヒトへの臨床応用のモデルとして中動物においてもOCP/Collagen複合体による骨再生能が確認された.これにより生体材料のみで顎骨において骨再生が充分可能であることが示唆された.今後,再生骨の組織学的検討,強度等を検索し歯の移動や排列が可能か否か継続研究を行う.
|