研究概要 |
FGF受容体遺伝子(FGFR)はPfeiffer,Crouzon,Apert症候群等の頭蓋縫合早期癒合症,および軟骨異形成症の原因遺伝子であり,骨・軟骨細胞の増殖・分化にFGFRは重要な働きを担っている。 我々の教室では,Crouzon症候群(4例),軟骨異形成症(1例)におけるFGFR2,FGFR3遺伝子の変異を末梢血DNAを用いたPCR-SSCPおよびDirect sequencingにて解析した。 その結果,生後76日目に頭蓋内圧亢進のため、脳室-腹腔短絡術を施行、生後160日目に頭蓋冠形成術を施行されたCrouzon症例1ではFGFR2 exon7にLeu343Met置換を認めた。2才で頭蓋冠形成術を施行された症例2ではexon5にGlu289Pro置換を認めた。一方,13才4ヶ月で、頭蓋冠形成術を施行した症例3ではexon7にSer354Phe置換を認めた。また、頭蓋冠形成術を施行しなかった症例4では、Leu751にTのInsertionを認めた。さらに,生下時,骨形成不全と四肢短縮を示し,生後5カ月で脳室-腹腔短絡術を施行され,臨床診断に苦慮した症例5では,FGFR3の細胞膜貫通領域に遺伝子変異を認め,軟骨異形成症の確定診断を得た。 これらの結果から,FGFR遺伝子の変異が、部位特異性に臨床症状に反映していることが明らかとなった。特に、FGF結合領域、細胞膜貫通領域の変異は、生後早期に重篤な臨床症状を示すことが明らかとなった。しかし、ループ結合領域の変異における臨床症状は、早期に重篤な症状を示すことがなかった。以上のことから、遺伝子診断により、臨床症状の程度や頭蓋顎顔面骨格の発育予測も可能であることが示唆された。
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