研究概要 |
VEGF分泌シグナル領域を含む165のアミノ酸配列をコードするcDNA断片を作製した.遺伝子活性マトリックスとして,0.3%ウシ真皮由来酸可溶性I型アテロコラーゲン溶液を使用した.本溶液(3.3mL,乾燥重量10mg)とVEGF plasmid DNA溶液(1.0mgのplasmidを含む)を混和して凍結乾燥後,4週齢ウィスター系雄性ラット背部皮下組織内に埋入した.その結果,明らかな血管新生誘導の効果は認められなかった.コラーゲン自体の血管新生能にVEGF plasmid DNAの効果がマスクされた可能性や細胞への導入率の低さ,VEGF plasmid DNA至適濃度の問題と考えられた.BMP-2 plasmid DNAを使用しても効果は得られなかった.一方,血管新生遺伝子を併用しなくともBMP-2単独タンパク療法で十分な骨誘導現象が認められた.これらを背景にタンパク質単独投与実験とした.BMP-2(2μg)/I型アテロコラーゲン(10mg)複合物をウィスター系雄性ラット(4週齢,10か月齢,18か月齢)背部皮下組織内に埋入した.1,2,3週後に摘出し,IV型コラーゲン免疫染色(血管の指標)とヘマトキシリン-エオジン染色を行い,光学顕微鏡で観察した.埋入2週後,4週齢と10か月齢ラットで誘導骨が観察された.18か月齢ラットでは3週後に局所的に骨誘導が認められた.2週後の血管数(埋入物中央部)は4週齢,10か月齢,18か月齢で,それぞれ34本,19本,1本であり優位差を認めた.以上より,加齢によりrhBMP-2による異所性骨誘導は遅延して硬組織形成量は減少を示したが,老齢期ラット(18ヵ月齢)でも本タンパク質システムで骨誘導能が維持されることが示された.
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