研究概要 |
骨髄由来のヒト未分化間葉系幹細胞(hMSC)は体性幹細胞として成人の体内からも採取でき、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞へと分化が可能なことから、再生医療の自家移植材料として注目されている。本研究では、hMSCを骨芽細胞誘導培地にて培養し、骨芽細胞への分化に関与する遺伝子の検索を目的とした。hMSCを骨芽細胞誘導培地にて培養し、0,1,3,5,7,10,13,17日目の細胞からtotal RNAを抽出し、GeneChipにて遺伝子発現を測定した。遺伝子発現解析は解析ソフトGene Springにて行った。遺伝子発現をreal-timePCR法にて確認した。また、アリザリンレッドS法、von Kossa染色法にて石灰化を判定した。hMSCを骨芽細胞誘導培地にて培養を行うと、10日前後からアリザリン染色が認められた。GeneChip解析の結果、骨芽細胞への分化過程で23,000遺伝子のうち13,069遺伝子の発現が認められた。石灰化が認められる10日の遺伝子発現を骨芽細胞へ誘導していない0日と比べたところ、3倍以上の変化が認められた遺伝子は492遺伝子で、binding、signal transducerにオントロジー分類される遺伝子が多かった。また、石灰化期10日で最も上昇率の高い遺伝子はsmall leucin rich proteoglycan(SLRP)familyに属するasporinであった。そこでSLRPの13遺伝子に注目してそのmRNAレベルをreal-timePCR法にて確認したところ、骨芽細胞誘導細胞で遺伝子発現上昇が認められたものは、asporin、decorin、osteoadherinであり、特にasporinが高い上昇率を示した。以上の結果から、asporinはhMSCの骨芽細胞への分化に関与していることが示唆された。
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