研究概要 |
非歯原性疹痛(顎口腔顔面痛)の中に頸部組織の病態に由来する疹痛がある。この頸部組織に由来する顎口腔顔面の痛みについては,未だその機序が解明されていない。本研究では,頸部組織由来の顎顔面痛の病態を究明する研究を計画した。まず,頸神経を損傷したラットにおいて三叉神経領域に機械刺激を加え,逃避反応の潜時を計測することで,痛覚過敏の発現を行動学的に観察した。また,同刺激を加えた後のfos様タンパク陽性細胞(Fos-LI細胞)の発現様式を観察することで,下部延髄から上部頸髄にかけての感作についての検討を免疫親織学的に行った。さらに,頸神経損傷に伴う痛覚過敏に対して,頸部交感神経幹の切断を行い,交感神経遮断の感作に及ぼす影響について検討を加えた。その結果,以下の知見を得た。1.頸神経の傷害は,三叉神経領域の痛覚過敏を引き起こした。2.Fos-LI細胞の発現はvi/VcおよびVc/Cのみならず,Vc中間部やC3でも増強した。3.交感神経の切断は,統計1学的には明らかな行動の変化をもたらさなかった。4.交感神経の切断によって,Vi/VcならびにVc/Cに著明なFos-LI細胞の発現が見られた。以上の結果から,頸神経の傷害は,Vi/Vcから上部頸髄にかけて広い範囲に分布するニューロンの感作を引き起こす可能性があると考えられた。この感作は頸神経と三叉神経のconvergenceに基づく可能性がある。交感紳経の切断は,Vi/Vcから上部頸髄における侵害受容線維の刺激伝導を修飾している可能性があると考えられた。
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