研究概要 |
プラークに歯を再石灰化する際にフッ素やミネラルを供給するリザーバーとしての働きがあることが報告されプラークの再石灰化能に関する働きが注目されている。また,プラークに対し均一にフッ素をリザーブさせるにはフッ素洗口が有効であると考えられる。そこで本研究では,フッ素洗口後におけるフッ素が唾液クリアランスの異なる部位のプラークに対しどのような濃度分布で存在するかを明らかにする。 平成16年度では,唾液クリアランスの調査研究を行った。 上顎の側切歯と第一大臼歯の唇側面を対象に,225ppmF洗口液20mlを用いて30秒間洗口を行ない10分後の残留フッ素濃度を測定した。残留フッ素濃度は第一大臼歯部で有意(p<0.01)に低く,両部位において唾液クリアランスに違いが認められた。 平成17年度では,フッ素洗口後のプラーク中のミネラル分布の調査研究を行った。 16年度と同じく上顎の側切歯と第一大臼歯の唇側面を対象に調査した。同部位にプラーク堆積装置を装着し得られたプラークからフッ素とカルシウム,リンを層別に測定した。 フッ素洗口前のプラーク中のフッ素濃度は,前,臼歯部ともに全層にわたりきわめて低くフラットな分布を示した。一方,洗口後では,表層から内層にわたって著しい上昇を示した。前歯部,臼歯部の分布を比較すると,唾液に最もさらされる1層(表層)からの7暦(内層)目まで第一大臼歯部が有意(p<0.05〜0.01)に低い結果を示した。カルシウムとリン濃度は,洗口前後の前歯部,大臼歯部とで特に有意な差は認められなかった。 本研究からは,フッ素洗口後のプラーク中フッ素も唾液クリアランスの影響を受けることが示唆された。しかし,カルシウムおよびリンの濃度分布では,統計学的有意な差は認められなかった。
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