研究概要 |
外科的矯正治療を受けた顎変形症患者36名(下顎前突症17例、強度下顎前突症10例、上顎後退症+下顎前突症9例)の側面頭部X線写真を資料とした。術前の軟組織側貌計測11項目(顔面突出度,上顎前突度,鼻顔面角,鼻背傾斜度,鼻唇角,上唇突出度,E-line-UL, E-line-LL,顔面高さの比、上下口唇高さの比)を側貌の特徴量として、自己組織化マップ(SOM)を用いて2次元平面上にマッピングした(SOMでは側貌が類似したものが近傍に集まる)。次に、軟組織側貌の分類と硬組織移動量との関係を因果関係として捉え、山川らが提案した自己組織化関係ネットワーク(SORN)を用いて、術後側貌の審美性評価スコアが高くなるように学習させた。SOMで分類された各クラスタを手術による硬組織移動量に基づきサブクラスタに分割し、各サブクラスタに側貌の審美性スコアを割り当てた。これにより、新規症例の側貌計測値を入力することによって、(1)類似した過去の治療例(経験例)の検索が可能であり、新規症例の術後側貌をイメージ(想起)することができる。さらに、(2)サブクラスタを参照すことるにより、術後側貌の審美性評価が高くなるような硬組織移動量(Ulx, Bx, Ay, Uly, Mey, PNSy)を知ることができる。本システムは顎変形症の側貌診断および手術計画を支援するツールとして、また、顔貌の変化に不安と期待を抱く患者に対するカウンセリングやインフォームド・コンセントにも有用と考える。研究成果を、第51回日本口腔外科学会総会(北九州)、第19回バイオメディカルファジイシステム学会(千葉)、第7回アジアロ腔学顔面外科学会(香港)において発表した。
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