研究概要 |
骨シアロタンパク質(BSP)は,石灰化組織特異的に発現し,アパタイト結晶形成能を有する細胞外マトリックスである。ROS17/2.8骨芽細胞様細胞を用いてエナメルマトリックスタンパク質(エムドゲイン:EMD)およびリポポリサッカライド(LPS)によるBSPの転写調節機構について解析を行った。 EMD(50μg/ml)にてROS17/2、8細胞を刺激すると,BSPmRNA量は12時間後に増加し,-425および-801塩基対上流までのBSPプロモーター活性を上昇させた。その転写調節はホメオボックス応答配列(HOX)およびTGF-β応答配列(TAE)を介すると考えられ,ゲルシフトアッセイの結果,HOXとTAEに結合する核内タンパク質が,EMD刺激後12時間後に増加した。 ROS17/2.8細胞を,大腸菌由来の低濃度のLPS(0.O1μg/ml)で12時間刺激すると,BSPmRNA量は増加し,高濃度のLPS(0.1,1μg/ml)にて12時間刺激すると,BSPmRNA量は減少した。1μg/mlのLPSは,経時的(3,6,12時間)にBSPmRNA発現を抑制し,-108塩基対上流までのBSPプロモーター活性を抑制した。リン酸化阻害剤を用いた結果,LPSの効果はAキナーゼおよびチロシンキナーゼ系を介し,また,抗酸化剤(NAC)がLPSの効果を阻害することから,LPSは活性酸素を介してBSPの転写を抑制すると考えられた。さらに,BSPプロモーターの-116塩基対上流までの転写因子結合配列の中で,逆方向のCCAAT配列,cAMP応答配列(CRE),FGF2応答配列(FRE)に2塩基対ずつ変異を挿入したミューテーションプラスミドを用いて実験を行った結果,LPSの効果は,ラットBSPプロモーターの-84から-108塩基配列に存在するCREおよびFREを介すると考えられた。
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