研究概要 |
1.歯科繁用材料からのDNA抽出 手指を圧接させた歯科繁用材料(レジン、銀合金、パラジウム合金)の試料片(0.5×0.5cm、各20片、計60片)のうち、半数の30片より吸光度上10ng以上のDNAが得られた。しかしながら本研究において、試料の材質とDNA抽出量、ならびに手指の圧接力および圧接時間とDNA抽出量の間に相関関係は見出せなかった。 2.抽出DNAのシークエンスおよびに分析 上記において10ng以上得られたDNAは、シークエンスの結果、全例において手指の圧接者のDNAであることが確認され、Amelogenin遺伝子領域を対象とした性別判定も全例において明確に判別可能であった。しかしながら、10ngに満たない微量抽出DNAの場合には術者のDNAが検出される結果となった。また10ng以上得られたDNAを用いた場合には、D4S43 locusにおけるVNTRの変異、およびCSFlPO, TPOX, TH01 locusにおけるSTR多型の判定でも、問題なく型判定が可能であった。 4.手指の混合による抽出DNA mtDNAシークエンス既知の女性手指をあらかじめ圧接した試料片を用い、これにmtDNAシークエンス既知の男性手指を圧接して、性別判定およびシークエンシングを行った。その結果、Amelogenin遺伝子領域を対象とした性別判定では男性と判定されたが、シークエンシングでは両者の塩基配列が見出された。さらにD4S4310cusにおけるVNTRの変異を検索したところ、ラダー状もしくは両者のバンドが検出され、分析は困難であった。 5.収集したレジン補綴物からのDNA抽出 収集は難航したが、得られた55例から0.5x0.5cmの試料片を作成し抽出を試みたところ、およそ40ngからの1.5μgDNAが抽出された。 以上のことから、手指の接触は10ng以上のコンタミを及ぼす可能性が高く、その場合には、判定結果に重大な影響を及ぼすことが明確となった。そのためコンタミの疑いを持たれる場合にはシークエンシングによる確認が必須であると結論づけられた。
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