研究概要 |
1.カテーテル孔の吸引圧の測定:3孔式カテーテルを使用し,53.3kPaの設定圧では,孔にかかった吸引圧の最高は,1孔塞いだ場合に6.3kPa,2孔を塞いだ場合では8.2kPaであった.その時の吸引器が示した圧力はそれぞれ11.5kPa,12.5kPaであった. 2.吸引圧と吸引時間が気管粘膜へ及ぼす影響の検討:気管粘膜に,2側孔を塞いだカテーテルの先端孔を当て吸引した.広範囲に基底膜まで達する粘膜損傷があったのは,ラットでは500mmHgで8秒間,ウサギでは,100mmHg以上で8秒の吸引においてであった.ウサギでは,ラット気管では認められなかった上皮が粘膜固有層から遊離する粘膜損傷の形態があった. 3.カテーテルの回転による粘膜への影響の検討:ウサギの気管粘膜に先端と1側孔を塞いだカテーテルを横にし側孔を当て,2秒間移動した.同じ吸引圧では,静止した場合より損傷の程度が強かった. 4.栄養状態の相違による粘膜への影響の検討:絶食させて低栄養状態にしたウサギに吸引実験を行った.低栄養ウサギは健康ウサギの傷害と同程度またはそれより軽度であった.栄養状態は,気管吸引による粘膜損傷に影響を及ぼしていないと考えられた。 5.炎症モデル動物を用いた吸引実験:気管炎症モデル動物の作製の目的で,F-344系雄性ラットに、BLM10mg/kgを腹腔内注射4回〜10回行った.最終投与から2日〜14週間後に気管を摘出し標本を作製した.これを病理組織学的に検索し,粘膜組織に好中球を確認した.しかし,BLM非投与群にも好中球を認め,実験群に炎症が生じたと断定できなかった. 次に,BLM投与群および非投与群の切開した気管粘膜に,2側孔を塞いだ3孔式カテーテルの先端孔を当て圧400mmHg,8秒間の吸引を実施した.両群の粘膜損傷は同程度であった.BLM投与により気管粘膜が脆弱になったとはいえなかった.
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