研究概要 |
妊産婦の健康管理にとって,栄養が重要なことは言うまでもない。妊娠期・分娩期・産褥期の母児の健康を維持増進するための,妊産婦に対する栄養指導は重要な指導内容である。特に産科医療現場では,健康管理の任を看護職が中心となって行っている。 そこで,本研究では看護職の栄養指導を向上するための教育内容を明確化すること,さらに栄養指導のための教育内容を検討することを目的に,以下に報告する研究を行い,いくつかの知見を得た。 平成16年度は,看護職の栄養指導の実態と栄養指導のための問題点,さらに栄養指導を行うための看護職が行うべき学習を明らかにするために全国の産科医療施設の産科看護責任者と看護職を対象に郵送質問紙による調査を行った。これにより、94.7%の施設において,看護職が妊産婦の栄養指導を中心に担い,しかしながら医師や管理栄養士との連携は少ない状況にあった。栄養指導のための学習を88.9%が希望し,その内容は栄養指導の基本から最新の情報まで,多岐にわたることが明らかとなった。平成17年度〜18年度は,産科医療施設における栄養指導の現状と看護職への教育内容を産科医療全般の立場から明らかにするために,3施設の産科医療施設における医師,管理栄養士,栄養士,看護職への面接調査を行った。その結果施設によって,栄養指導の担当者や栄養指導方法は異なり,管理栄養士・栄養士の栄養指導への関わり方と看護職との連携が,継続した栄養指導のために必要なことが明らかとなった。また看護職は個々の対象者にあった栄養指導の必要性を感じているが,指導時間の確保が出来ない事,指導のための教育を受ける機会を有しない事が明らかとなった。このような状況下で看護職の栄養指導のための教育内容としては,栄養指導の基本的方法や栄養指導ソフトの活用方法を考察し試行した。さらに栄養指導者が不在の場合でも妊産婦が学習できる参加型食品栄養学習キットの開発を行った。折しも,平成17年に食育基本法が施行され,栄養指導という視点での妊産婦教育だけでなく,食育という新たな視点で妊産婦の教育を行うための学習も看護職は必要である。今後の課題としては,食育の視点で妊産婦への援助方法を確立していることが必要であると考えられた。今後の課題としては,妊娠期の合併症予防の栄養指導から母子への食育を踏まえた新たな教育活動を開発すること,特に妊娠期から育児期,そして学童期・思春期へとつながる総合的な食教育を開発していくことが望まれる。
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