研究概要 |
これまで報告されている自発的呼吸訓練器具の使用方法や臨床で実際に行われている使用方法に統一性が見られないため,その使用方法について検証した。 実験1では,健康な成人女子を対象に、自発的呼吸訓練器具を使用して,呼吸状態への効果的な使用回数の検討を行った。実験2では,臨床患者に実験Iで得られた結果をもとに呼吸訓練器具を使用した訓練を実施してもらい,その効果を検証した。実験1では換気機能の向上を期待する場合は10日間以上の訓練期間を必要とするものの,1日に行う訓練回数はあまり多くを必要としないとする示唆を得た。 実験2では,術後患者を対象にIncentive Spirometryを用いた呼吸訓練を行い,術後の換気機能の回復への効果を検証した。実験群が行う訓練は1日に4セット,1セットの回数を10回とした。実験期間は手術前日から術後10日目までとし,電子スパイロメータで術前,術後1日目,術後5日目,術後10日目に換気機能を測定した。対照群はIncentive Spirometryを用いた呼吸訓練を行わず,実験群と同様に換気機能を測定した。対象は、術前に換気障害が見られないこと,既往に呼吸器や循環器の疾患を持たないこと,全身麻酔で手術が行われ,術創部が胸・腹部にできないことなどの条件を満たした整形外科病棟に入院する患者とした。実験の結果,対照群の術後1日目の肺活量と%肺活量は術前より術後1日目に有意に低下した。また,術後1日目の肺活量と%肺活量は実験群より対照群の方が有意に低値であった。これらのことから,Incentive Spirometryを術後に使用することにより,換気機能の回復が期待できることと,最大吸気が充分に維持される呼吸訓練であれば「1セット10回を1日に4回」で効果が期待できることが示唆された。
|