研究概要 |
本研究は,夜間介護が家族介護者の血圧動態と疲労に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,100名の家族介護者の24時間睡眠状況,24時間血圧日内変動,および疲労感の実態を明らかにして,これらの関係性を分析した。また,影響要因を明らかにするため,要介護者の24時間睡眠状況と同一者の追跡調査を行った。 その結果,高齢の家族介護者は,降圧剤内服の有無にかかわらず血圧管理が重要であることが明らかになった。特に,女性介護者の降圧剤の非内服者で血圧値が高い者と降圧剤の内服者において,睡眠状況と血圧動態・疲労感との関係性が示唆され,適切な睡眠の確保が必要であると考える。 家族介護者と要介護者の24時間の睡眠状況を同時に測定した結果,家族介護者の睡眠は要介護者の睡眠の影響が大きいことが示唆された。したがって,要介護者が適切な睡眠を確保できるように睡眠環境を整えていくことが大切であると考える。 家族介護者の3年後は,日中の仮眠時間と24時間の睡眠時間が長くなっていた。特に,3年後に介護していなかった者においては疲労感が軽減していた。これらのことから,疲労感の軽減は,加齢のため睡眠時間を長くとるようにしたことに加え,介護役割がなくなったことによる影響が考えられる。 夜間介護で最も多いおむつ交換の介護動作時の身体負荷を明らかにする方法を確立するため,筋電計を用いたパイロットスタディを行った。本研究方法により,介護動作と動作時の血圧動態を測定することが可能であることが示唆された。 今後,さらに各事例の詳細な分析と縦断調査を継続するとともに,介護動作時の身体への負荷と介護環境から受ける影響について調査し,要介護者だけでなく,家族介護者の心身の健康を維持できる在宅での介護方法を明らかにしていきたい。
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