研究概要 |
このコホート研究の目的は,在宅酸素療法患者の疾患増悪・QOL低下と気象要因との関連を解明することにある。対象者は大阪府下の医療施設の外来に通院し,調査協力が得られた在宅酸素療法患者29名である。対象者の基礎疾患の多くはCOPDであり,そのほかは結核後遺症である。研究終了までに,死亡により4名,疾患増悪により3名,本人の申し出により2名の合計9名が研究から離脱した。本研究は大学と医療施設の研究倫理委員会の承認を受けて行われた。 われわれは,まず,対象者の曝露温度・湿度を得るために,患者宅の寝室,居間,携帯用酸素カートなどに温度・湿度センサーを設置して30分ごとに自動測定した。次に,70-80日間隔で対象者宅を訪問して,センサーに記録された温度・湿度情報と,患者に記載してもらったHOT日誌を回収した。HOT日誌には,酸素飽和度,脈拍数,身体の調子,食欲の有無,息苦しさの度合いなどの情報が記載されている。外気温のデータは地域気象観測システム(AMeDAS)の最寄り地点のものを利用した。 患者住所の居間・寝室の気温と,外気温との分布の比較,撒布図から,特に寒冷時は室内の気温が高め,夏期にはやや低めになり,冷暖房の影響が伺われたが,室温は30℃を越えることも多かった。 2005年の大阪は4月以降気温が上昇し,6月には観測開始以来最高の月平均気温となるような暑さが続き,6月終わり頃に最初のピークを迎えた。このような高気温の状況で,室温も上昇したため暑さに馴化できず,救急搬送された女性患者が見られた。この患者の場合,酸素飽和度の低下と脈拍数の増加が観察された。寝室の温度上昇には設置した酸素濃縮器が熱源として作用したことも影響している。 2005年の冬は,2月に降雪がみられた日および翌日に最も寝室温度が低下した対象者が多く,これを契機として体調不良になり入院したと推察される男性患者が見られた。
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