研究概要 |
米国の学校における自閉症児への心理・教育サービスは,IEP(Individualized Education Plan)における「関連サービス(Related Services)」として提供される。日本においてこのIEPに最も近いものは,自立活動における「個別の指導計画」である。しかし,IEPがIDEA(全米障害児教育法)に規定された特殊教育サービスを提供するための統一学校区教育委員会(Unified School District)・学校と保護者の契約書であるのに対し,「個別の指導計画」は学習指導要領にその作成が義務付けられている授業のための指導計画である。この点から考えていくと,NPO・POの外部専門家が自立活動の授業において,サービス・デリバリーを行うためには,少なくとも特別支援学校教諭免許状を有していなければならない。また特別支援学校教諭免許状には「自立活動教諭免許状」が別途存在するが,現在,「視覚障害」,「聴覚障害」,「肢体不自由」の3種類しかなく,「自閉症」又は「知的障害」の免許状の創設が望まれる。また,自閉症関連のNPO・POが提供しているサービス内容は「応用行動分析(ABA)」,「言語聴覚療法(ST)」,「感覚統合療法(OT)」,「早期教育」が多かった。いずれも学校教育用にアレンジされており,IEPで利用しやすいサービス内容になっていた。NPO・POの側は「個別の指導計画」の長期目標・短期目標に合わせたサービスの準備が必要であると思われる。また,州教育省は教育に携わるNPO・POに対し,NPO等の認可とは別に「NA(Non Public non-sectarian Agency)」資格を認定し,統一学校区はNPO・POと交わす厳密な契約書を有していた。このように資質を保障するシステム作りが必要であると同時に,NPO・PO内部ではスタッフ・トレーニングを行うシステムを確立しており,「関連サービス」を提供するシステムが確立されていた。
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