研究概要 |
科学研究費補助金による2年間の研究において,地上における種々の液体を用いた造形実験と実験結果の解析,および微小重力空間において造形実験を実現するための具体的方法の検討を行った。 実験では,地上の重力のもとで重力による変形を押さえるため,水や水銀などの微小液滴に周波数を変えながら音波を当てて共鳴させることで,液滴の表面張力による振動の様子を映像で記録し解析した。また,地上の重力による影響を消去するため,水と同じ密度の油性液体(流動性イソパラフィンで分散させた磁性流体)を水中に保持し,それに強制振動を与え共鳴させることで,微小重力空間における液体の表面張力による振動を模擬することができた。この実験も,結果を映像で記録し変形の特徴を解析した。 実施した実験から,微小重力空間での液体を定常的に変形させて固化して持ち帰ることは,超音波発生装置などの機材を必要とするため国際宇宙ステーションで実現することは困難であるが,空中に保持した液体の球に低周波の強制振動を与えて変形させることによる造形実験は,国際宇宙ステーションでの実現が容易であり,また,振動の与え方によっては微小重力空間を印象づける興味ある液体の運動を引き起こすことが可能であることがわかった。このような液体による造形実験を映像として記録するだけでも,一般の人に宇宙という環境を直感的に伝えるには十分可能であると考えられる。 本研究の成果の一部は,打ち上げが予定されている国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」において計画中の人文社会化学実験のための提案として宇宙航空開発研究機構に提出した。
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