研究概要 |
MEMS等を実用化するには,部品がナノオーダーに小さくなった際に顕著となる摩擦の理解が不可欠である.ナノメートル規模の部品同士の摩擦現象をシミュレートする為には,部品の大規模変形振動と部品構成原子一不純物分子間の局所的化学反応を,共に取り入れることが必要である.このためには,化学反応領域には電子密度汎関数法,その近傍には古典分子動力学法,周辺には計算量を減らすための粗視化手法を適用し,これらを同時並列的にハイブリッド化することが望ましい.局所的な化学反応を取り入れられるハイブリッド密度汎関数-分子動力学法において,任意に選んだ密度汎関数領域に対して安定的に利用できるbuffered cluster法を初めて考案した.buffered cluster法を用いることで,シミュレーションの経過に従って自動的に密度汎関数領域を変化させて化学反応をトレースすることが可能となった.また実際的規模系の大規模変形を扱うために,新しい粗視化手法である粗視化粒子法のコード化を進めた.開発したコードの応用例として,水素終端化したSi表面とSiチップとの間に複数の水分子及び水酸基をはさみ高速度で擦るハイブリッド密度汎関数-分子動力学シミュレーションを,日米の合計800ノード程度の世界最大規模のグリッド計算環境において一週間程度連続して実行することに産総研と協力して成功した.この結果はSpercomputing2005国際会議において設置したブースにおいて発表した.
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