研究課題
基盤研究(C)
本研究では3ヵ年にわたり、1980年代以降の東京を中心とする大都市とその周辺の都市空間の社会的生産の現状と、それを規定する社会的な論理を分析・考察するためのデータの収集、関連する諸研究の調査、それらに基づく分析とその成果の報告・発表をおこなってきた。現状に関する調査は、東京都心部の再開発地区や新たに開発が進みつつある地区、70年代から現在に至るまで開発や再開発が進められてきた郊外住宅地や郊外ニュータウン等を対象とするフィールド調査を継続的に行い、またこれらの地域の開発に関する文献資料やデータを収集し、さらにインターネット上でこれらの都市空間の再開発に直接・間接に言及するサイト上の情報やイメージも、現代における「イメージの都市空間」を構成するものとして収集した。こうして集められた資料やデータから、現代の大都市における都市開発および再開発では、都市施設を構成する建造物に様々な記号化やデザイン化を施すことで場所性を積極的に演出し創造する手法が洗練されており、そのことによって不動産の商品価値や資産価値を高めようとする動きが顕著であること、人びとの日常生活や意識もこの手法によって構成・演出された都市空間を社会的文脈とするものであること、それによって人びとの意識や視界の前面を演出化された都市空間が占める一方で、その周囲や外側の旧来の都市空間や地域社会はあたかも「余白」であるかのように人々の視線や景観から排除されつつあることが明らかになった。同様のことは、比較研究のために訪れた韓国ソウル市の都市再開発の事例と、そこでの韓国・中国の専門家との意見交換でも確認された。さらに、そのような都市空間とそれに対する意識の変容を、東京郊外を主たる対象として歴史的パースペクティヴの元に検討する作業も実施し、上記の仮定を戦後日本の社会変動(都市化と消費社会化、私生活化)の流れの中に位置づけることを試みた。
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