研究概要 |
本研究の目的は,1.スクレーピーマウスの血液や尿中に脳神経組織細包から逸脱する特異蛋白質を網羅的に解析・同定することと,2.イギリスのウェブリッジ中央獣医学研究所より分与されたBSE50頭と正常50頭(合計100頭)の血清を同様に解析し,スクレーピーマウスで見つけた特異蛋白質が検出されるかどうか明らかにすることの2つである。 血清蛋白質の網羅的解析には,2次元電気泳動を用いて行ない,蛋白質の特定にはMALDI-TOF-MSを使用した。また,抗体の検出にはWestern Blotting法を用いた。 1)スクレーピーマウス血清中の特異蛋白質 ハムスターのプリオン遺伝子を押入したTg20マウスに,異常プリオンを感染させたマウス脳ホモジネートを注入した。およそ2ケ月後,このマウスは脱水症や異常行動を示した(発症)。この時点での血液を採取し,血清分離を行った後に,2次元電気泳動で非感染マウスのそれと比較した。下方の矢印で示したスポットがスクレーピーマウスで検出され,このスポットから蛋白質を抽出し,MS解析したところ,:Fasに対するモノクローナル抗体のFab部分のアミノ酸の配列と一致した(特許2004-216510)。 2)BSE血清中の蛋白質 スクレーピーマウスで検出された特異蛋白質は抗体蛋白質であったので,BSE血清中にも同様の蛋白質があるかどうかを,血清を1次抗体,ウシIgGに対する抗体を2次抗体としてWestern Blottingを行った。その結果,神経組織に特異的に40-60kDa付近にポジティブバンドが検出された。現在,この蛋白質抗原の精製を行っている。すなわち,スクレーピーマウス同様,BSEにおいても血清中に自己抗体が表れてきていることが本研究で判明した。
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