研究概要 |
オレキシンA,Bをラットの睡眠が多発する明期に第3脳室内に持続投与すると,顕著なノンレム睡眠とレム睡眠の抑制がみられ,強い覚醒作用を持つことはすでに報告してある。オレキシンにはOX_1R,OX_2Rの2種類の受容体が存在する。そこでOX_2Rアゴニストである[Ala^<11>]orexin-Bを第3脳室内に持続投与するとオレキシンに匹敵する強い覚醒作用を有することが判明した。さらに,オレキシン受容体2型のアンタゴニストにより外因性オレキシンによる覚醒作用が強く抑制され,睡眠抑制作用が減弱されることが判明した。そこで,これらの覚醒作用が脳内のどのような機構によって発現するのか,ヒスタミン(HA)の覚醒調節系に着目した。前もってα-FMHをラット腹腔内に投与しておき,オレキシンBをラット第3脳室内に持続投与すると,オレキシンBによって引き起こされる覚醒作用が抑制されたことから,脳内HAの合成がα-FMHにより阻害され,その結果HA神経を介して発現するオレキシンの覚醒効果が抑制されたと解釈される。 最近、エネルギー代謝と睡眠調節に関わる脳・腸ペプチドが次々と報告され、肥満と睡眠障害という社会的課題との関連で注目されている。モルモットの腸管各部位における腸神経系の機能構築とオレキシン、モチリン、グレリンおよびニューロペプチドYなど脳・腸ペプチドに着目し、これらの腸神経系における生理作用を電気生理学的方法で解析した。モチリンが腸ニューロンを直接興奮させ,さらにシナプス前線維終末に作用してアセチルコリンの放出を抑制することを明らかにした。したがって、モチリンは腸神経系内の特定ニューロン群に直接・間接的に作用することにより腸運動に影響することが判明した。脳では覚醒と摂食作用を持つオレキシンAとBがともに、ほぼ同等に、腸神経系においては腸ニューロンの興奮と神経伝達促進を起こすことを明らかにした。
|