研究概要 |
眠気は,心理的尺度で評価される前頭連合野由来の眠気,睡眠潜時反復検査で評価される睡眠機構由来の眠気,orexin/hypocretin欠乏等により生じるナルコレプシなどの覚醒維持機構由来の眠気に大別できると仮定し,脳波的入眠潜時,行動的入眠潜時とモチベーション,眠気の軽重を組み合わせた実験により検証した. 健康成人18名(21.9±0.7歳)を対象とし,習慣的就床時刻より10時間後,14時間後に20分間の睡眠ポリグラフ測定を行い,10秒ごとにスピーカーからの音に対するボタン押しをさせた.その際,入眠許可条件(SLT)と覚醒維持条件(MWT)をカウンターバランスで配置し,入眠期脳波と音刺激に対する行動的反応を分析した.脳波的入眠段階潜時と行動的反応消失潜時の相関を算出し,時刻(am/pm)および条件問(MWT/SLT)で比較した.さらに,90分間の部分断眠を行った健康成人6名(21.3±0.6歳)と閉塞型睡眠時無呼吸患者6名の脳波的入眠段階潜時と行動的反応消失潜時につき比較した. 健康成人で,行動的反応消失潜時と脳波的入眠潜時について,午前・午後,MWT・SLTを合わせた相関を求めたところ,α波消失期および頭頂部鋭波期には有意だが弱い相関が見られた.一方,θ波期潜時と行動的反応消失潜時には有意な相関は見られなかった.時刻(am/pm)および条件(MWT/SLT)ごとに相関を検討したところ,午前のMWTでの相関がもっとも強く,逆に午後の時間帯ではMWT・SLTともに相関はなかった.眠気があまり強くない場合には,覚醒へのモチベーションの有無によって,脳波的・行動的な入眠潜時に乖離が生じ,生理的眠気も,睡眠機構由来の眠気,覚醒機構由来の眠気の3種に分類できる可能性が示唆された.一方で,眠気の強い部分断眠健康成人と閉塞型睡眠時無呼吸患者については,両群に有意差はみられなかった.
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