研究概要 |
本研究では,IODPの掘削の主要課題である「白亜紀の無酸素事変」に対する掘削プロポーザルを作成するため,「現在と過去の無(貧)酸素環境を考える」のワークショップを1月10日から12日の3日間,北海道大学E302号室で開催した.最初に,現世の無酸素環境を理解するため,貧酸素環境に生息する底生生物群集(堤,熊本県立大),沿岸閉鎖海域の無酸素水塊の発達様式(風呂田,東邦大),無酸素環境における物質循環(門谷,北大),貝池・日本海における無酸素環境(松元,JAMSTEC),堆積物中のバクテリア群集構造と堆積環境(竹内,産総研),微好気〜嫌気環境での微生物の生態(加藤,静岡大),Redox of the Earth system evolution(山口,JAMSTEC),無機地球化学からみた無酸素環境(川幡,産総研),oxic/anoxic境界における生物地球科学(山中,九州大),アミノ酸有機物と黒色頁岩(高野,産総研),バイオマーカーからみた無酸素環境(沢田,北大)の11講演が行われた.次に,過去の無酸素環境の実態として,白亜紀の古海洋シミュレーション(山中・三角,北大)白亜紀OAE2における海洋環境(大河内ほか,JAMSTEC),南フランス白亜紀黒色頁岩に記録された多様な還元環境レベル(坂本・飯島,JAMSTEC),Lipsの活動史と環境変動(斎藤,IODP-IMI札幌オフィス),テクトニクスと無酸素環境(高嶋,北大),大型化石からみた無酸素環境(栗原ほか,三笠博物館),北海道の白亜紀OAE研究(長谷川,金沢大)の7講演が行われた.両者の講演が終了した後,討論をおこなったところ,現在の海洋で生じている無酸素環境は,微化石の解析,化学元素の分析,無痕相の観察,バイオマーカーの分析などを用いれば,過去の地層でも十分認識できる可能性が高いことが明らかとなった.
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