研究概要 |
本研究は,現在ISOにおいて策定中のトラクタ・作業機に羹するデータ通信プロトコル規格ISO11783をベースに機械作業,作業体系,作物情報など多種多様な視点から日本型作業体系に適合可能な農用車両内ネットワークプロトコルについて検討を行うのが目的である。目的遂行にあたり,海外動向に関する調査,諸企画調査,国内の作業体系に関する調査の3つの観点から調査を行った。 (1)海外動向に関する調査農業機械分野におけるCAN技術利用研究は欧米メーカを中心に盛んに行われており,特に元となるDIN規格を制定したドイツではDLG(ドイツ農畜産業協会)が行う認証試験も存在する。また各メーカ間の接続互換性を検証するためのプラグフェストを年2〜3回実施し,効率的な開発促進を行っている。これらの状況を調査するためにミュンヘン工科大学のMarkus Ehrl氏を迎え,共同研究者による勉強会およびメーカを交えたセミナーを行った。 (2)諸企画調査ISOBUSの基礎となるISO11783規格は全13章のうち7章が確定済みであり,実用に供するに最低限必要なものはほぼ確定している。しかしながら,日本への適用を考慮すると,2バイトコード体系を必要とする仮想端末が未だ1バイトコードにのみ適用可能であり,その対策がなされていないことが指摘された。また,これまでISO11787 ADISを基本としていたデータディクショナリが,可搬性を考慮しXMLをベースとしたAMEDに変更された。 (3)作業体系との関連国内における農作業体系へのISOBUSの導入可能性を検証するために,畑作(小麦,大豆),稲作(飼料稲を含む)作業体系との関連性を調査した。その結果,トラクター作業機系を実作業に供するために最も重要となる11章が未確定であり,またその作業区分が欧米諸国を中心に作成されたこともあり,畑作関連作業においては日本にもそのまま適用可能であるが,稲作関連作業において部分的に修正が必要であることがわかった。 以上の結果より,現在のISOBUS規格は基本的な作業においては日本においても実用に耐えうるが,全ての作業体系に適合する訳ではなく,また日本ユーザがそのまま受け入れるには多少難があることが明らかとなった。これらの結果はセミナーを通して公表しており,今後国内メーカとの連携をはかりながら国内においても利用可能なプロトコルの開発を行っていく予定である。
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