研究概要 |
本研究は,「安心」できる情報インフラストラクチャの検討の一環として,なりすまし等の不正利用の検出時に漏洩する情報量を極小化できる機構を,待機時の消費電力の浪費なしに実現できる,自己同期型データ駆動ネットワーキングプロセッサアーキテクチャの要件を明らかにすることを目的としている. 研究最終年度にあたる本年度は,これまで進めてきた,情報漏洩防止のための分岐機構を付与した自己同期型エラスティックパイプライン構成をさらに検討した.具体的には,複数の環状パイプライン構成を用いたチップマルチプロセッサ型データ駆動ネットワーキングプロセッサの実時間応答性について,半定量的な評価を進めた.その結果,分岐機構が数段程度のパイプラインステージを用いて実現される可能性が見出された.また,この実現法を採用すれば,データ駆動原理の受動的な動作が最大限に活用され,因習的なノイマン型プロセッサに比較して,格段に優れた実時間応答性が確保されるとの知見が得られた.さらに,自己同期型エラスティックパイプラインでは,真に情報処理中の部分に電力消費が極限されるため,待機時の消費電力の浪費が生じないことも実験的に確認された. 本研究によって,情報漏洩防止機構を付与したチップマルチプロセッサ型データ駆動ネットワーキングプロセッサのアーキテクチャの環状自己同期型エラスティックパイプラインの基本的実現法が明らかになったと考えている. 今後の課題としては,本研究で明らかになったデータ駆動ネットワーキングプロセッサの通信・放送環境に適した命令セットの設計ならびに不正利用の検出のための実時間監視方式の確立が挙げられる.また,低消費電力化については,現在盛んに議論されているクロッキング方式,GALS(Globally Asynchronous Locally Synchronous)の考え方を取り入れた方式についても検討を加えたい.
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