研究概要 |
平成18年度は量子コンピュータの命令セットについて,シミューレータによる動作検証を進めるとともに,FPGAによるエミュレータテストベッドボードの実現を試みた. また,国内外の旅費を中心に用いてさまざまな研究者の意見や成果発表を行った. 申請者はすでに,ShorやGroverのアルゴリズムを解析し,汎用量子コンピュータに必要とされる具体的な命令について検討を行い,従来の計算機アーキテクチャの観点から量子コンピュータの持つべき命令セットを洗い出している. さらに,その命令セットを実現する汎用の量子コンピュータアーキテクチャの内部ブロックの仕様を確定し,データパスはそれぞれのユニットの制御信号の設計を行った. ここで提案するアーキテクチャは,まずShorの因数分解アルゴリズムに代表される数種の量子アルゴリズムを検証した結果より抽出された量子命令セットを含む.そして,進展が目覚しい量子通信分野において,その基礎理論となる量子テレポーテーション理論を用いてコンポーネント間の情報伝達を行い,さらに量子コンピュータにユニークな,量子初期化レジスタ,量子が絡み合った状態のEPRペアから構成されるEPRレジスタ,量子ALUをコンポーネントとして含む量子ユニットと従来のモデルとしてのフォンノイマン型ユニットを融合した形態のハイブリッドアーキテクチャである.また,これまでのプログラム内蔵方式とソフトウェアを柔軟に継承することが可能になる. 本アーキテクチャが,大規模な量子計算を量子ワイヤリングで全て構成された量子回路で処理するような完全な量子コンピュータが数十年後に実現されるであろうその一歩手前のプロトタイプとして位置付けられるという点で意義高いものと考える.
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