研究課題
萌芽研究
昨年度は、in vivoナノタンパク質工学を目的として開発された光アフィニティーラベル化後修飾法が未知の薬の作用部位同定法として利用できることを報告した。今年度は、実際にその有効性を確認するために、我々が新たに同定した従来とは異なる作用を有する免疫抑制剤の作用部位同定にこの手法を応用した。まず、免疫抑制剤の作用部位をある程度推測するために、カルシウムイオンの流入阻害について検討した。カルシウムイメージングを利用した結果からこの薬が受容体刺激後のCa2+流入を阻害することを確認できた。流入経路はTRPCチャネルと呼ばれるチャネルであると考えられたので、各サブタイプに対する選択性についてHEK293細胞を用いた評価した。その結果、この薬はTRPC3のチャネル活性を選択的に抑制できることを見出せた。さらにホールセルモードのパッチクランプ法を用いることで、細胞外からこの薬はチャネル活性を阻害することも確認できた。TRPC3に直接この薬が作用していることを証明するために、本申請内容で提案したアフィニティーラベル化後修飾法を利用した。具体的には、この薬に対応するアフィニティーラベル化剤を有機合成し、TRPC3を過剰発現させたHEK293細胞に作用させた。光照射後に細胞膜画分を回収し、ラベル化後の選択的な修飾反応としてビオチン修飾を行った。反応進行をウェスタンブロッティングにて確認したところ、TRPC3に選択的に反応していることを確認でき、この免疫抑制剤がTRPC3に直接結合している証拠を得ることができた。以上の結果から、本研究において開発した光アフィニティーラベル化後修飾法が受容体可視化だけでなく、未知の薬の作用部位同定法としても利用できることを実証した。
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