研究概要 |
骨格筋系および脳血流配分の発達を検討するため,発育期における女子中高生141名(12〜18歳)において,心拍出量(CO),心拍数(HR),一回拍出量(SV),左総頸動脈血流(CCABF),左中大脳動脈血流速度(VMCA),平均血圧,握力,頭蓋計測,身長,体重を検討した.そして個々のパラメータが前学年の平均値よりも有意に変化する年を見出した.本研究ではCCABFを脳血流指標として用い,CCABF/CO×100の式により脳血流配分(%)を算出した.その結果,各測定パラメータの変化が著しかった時期は次のような順となった.まず一回拍出量(SV)の増大が中1(12歳)から生じ,高1(15歳)までその増大が続いた.一方,HRは中3(14歳)〜高1において急激に減少したが,その減少を凌駕するSVの増大のために,HRとSVの積であるCOは中1〜中3にかけて著しい上昇を示していた.このような心機能の発達の後に脳血流が変化した.VMCAが中2〜中3に,CCABFが中3〜高1において急激に増大した.そして高校生以降になり,体重および握力の急激な増大がみられた.握力の顕著な変化は高1〜高2であった.したがって,心機能,脳血流,筋系といった順序で発育することが示唆された.また脳血流配分の発達は,中1の11%を最高に中3では成人の値である7%(但し左側のみで計算)まで減少し,高校以降はほぼ7%という一定値を示し変化がみられなかった.この11%から7%への配分減少は,CCABFの低下ではなく,COの著しい増大に起因する配分比率の低下であった.これらの結果から,脳血流配分は骨格・筋系の発育スパート(高1〜高2)が起こる前にその発育を終了させ,そして骨格・筋系のスパート時期が脳血流配分を低減させるようなことはないと結論づけられた.
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